石崎朝世 医師・医学博士(発達協会王子クリニック)

薬物治療とその目的について解説するとともに、副作用についても、お話ししたいと思います。

まず、薬物治療がどんなときに考えられるか、また、その目的についてお話しします。クリニックのホームページのコラム「薬物治療が必要なときとその実際」にすでに示してありますが、発達障害のある子どもたちのさまざまな問題についての対応では、理解あるかかわりと環境整備や生活指導が中心となり、多くの場合、薬物治療は必要にはなりません。ただ、問題となる症状のために、家庭生活や集団生活、そして学習することも困難で、二次的な障害がつよく懸念されるとき、あるいは、薬物療法が必要な精神疾患と思われるときは、副作用に注意をしながら、薬による治療を併用することがあります。薬物治療も含め、発達障害を持つ子どもへの対応の目的は、「子どもの能力を伸ばし、生き生きとした社会参加を実現させること」です。その目的のために、薬物治療が必須であると思われたときに使用します。お薬を飲むことで、子どももかかわる人たちも困難さがかなり少なくなり、悪循環が断たれ、良い方向へ進むことはよく経験されます。しかし、ほとんどの場合、同じ障害(あるいは体質)であっても、環境により症状の出方や発達の仕方が違います。お薬で、少し落ち着いたといったことがあっても、発達を促す環境がなければ、良い結果となることはありません。一定の効果を予測して使用しますが、お子さん(ときに青年、成人)によって、反応は様々です。副作用の出方も違います。

次は、副作用のお話です。副作用は、薬によって違います。また、何よりも、薬を服用する人の体質により違います。まったくない人もいれば重い副作用が出てしまう人がいます。ただ、保険診療で使用を認められた薬では、使い方が規定に外れていなければ、多くの人に重い副作用が出るということはありません。その上で許可されています。ただ、体質によっては予想外の副作用がでることもあります。薬物治療の標的になる症状が顕著であれば、十分量を使わなければならないこともありますが、そのときは、副作用にも十分な注意が必要です。代表的な副作用を述べます。まずは、抗精神病薬といわれる薬です。発達障害では、自閉症スペクトラムなどの著しい過敏性や易興奮性、妄想性障害が起こった時に使います。眠気や反応性の低下がでることが少なくありません。次いで、手足の震えや無表情といったパーキンソン症状、また、過度の食欲による肥満が心配されることもあります。思春期以降の女性では、プロラクチン増加による生理不順も問題になります。ごく稀ですが、服用初期に高熱を発し、痙攣や意識障害を起こし、危険な状態になることもあります。次は、抗不安薬です。いらいら、不安、緊張があるときにそれを軽減し、QOLの向上を目指します。やはり、眠気や反応性の低下に注意しなければなりません。また、継続服薬で、効果が減じ、服薬量が増加することもあります。また、薬を飲むことへの依存が起こる可能性があることにも注意が必要です。抗うつ薬は、人によっては眠気が起こり、人によっては高陽するといったことも起こります。そう状態になってしまったり、攻撃的になったりすることもあります。若い人では自殺の危険も増す可能性が言われています。また、薬によっては、薬を減らすときに不安感やいらいらが増すこともあります。抗てんかん薬でも、薬により、また人により、様々な副作用が出ます。やはり、眠気や反応性の低下、ふらつきは少なくありません。脳波異常の改善などにより、気分や行動が安定することが多いのですが、反対に、落ち着きをなくしたり、攻撃的になったりすることも稀にあります。アレルギー反応はどのような薬でも起こりえますが、とくに注意が必要な薬(カルバマゼピン、ラモトリジン)もあります。また、どのような薬でも、肝機能障害、腎機能障害、白血球や血小板の低下などの血球変化を起こす可能性があるので、薬を継続的に服用する人は、定期的な血液チェックが必要です。薬によっては、不整脈を起こすものもありますので、心電図のチェックが必要な場合があります。以上、代表的な副作用を示しましたが、前にも述べましたように、人によって反応は様々です。服薬して間もなく(気がつくのが半年くらい経ってということもあります。)、気になる症状が出たら、すぐ、主治医と相談することが大切です。

症状別に治療の実際については、別のコラム「薬物治療が必要なときとその実際」に示しましたので、それをご覧ください。

我々のクリニックでは、薬を処方するとしても、リハビリテーション科、指導部のスタッフとも連携を取りながら、また、学校や他の福祉機関などとも連携をとりながら、副作用に気をつけて、適切と思われる薬の必要最小限の処方をしていきたいと思っています。多くの医師はそれを心がけていると思います。本人、家族、関係者、そして、医師が「それぞれの力を伸ばし、生き生きとした社会参加」の目的を持って協力すれば、必ず、不適切な薬物治療は防ぐことができると考えます。

なお、副作用が出た場合は、主治医にご相談ください。