石崎朝世 医師・医学博士(発達協会王子クリニック)

*薬物治療の実際は、クリニックのホームページのコラム「薬物治療が必要なときとその実際」をご参照ください。

  1. 薬物治療の目的

    発達障害を持つ子どもへの対応の目的は、「子どもの能力を伸ばし、生き生きとした社会参加を実現させること」です。薬物治療もこのために行うことがあります。

  2. 薬物治療が必要とされる場合

    理解あるかかわりと環境整備、適切な生活指導があっても、以下の状況がある場合は、薬物治療を行います。

    1. その症状のために本人がひどく辛い状況
    2. その症状のために家庭生活や集団生活が困難
    3. その症状のために学習が困難
    4. その症状のために二次障害がつよく懸念される。
    5. 薬物治療が必要な精神疾患がある。
  3. 副作用の話し

    副作用は、薬によって違います。また、何よりも、薬を服用する人の体質により違います。まったくない人もいれば重い副作用が出てしまう人がいます。ただ、保険診療で使用を認められた薬では、使い方が規定に外れていなければ、多くの人に重い副作用が出るということはありません。以下、薬の種類別に、代表的な副作用を述べます。

    1. 抗精神病薬(発達障害では、自閉症スペクトラムなどの著しい過敏性や易興奮性、妄想性障害などが起こった時に使います。)
      • 眠気や反応性の低下
      • 手足の震えや無表情といったパーキンソン症状(錐体外路症状)
      • 過度の食欲による肥満、薬によっては糖尿病
      • 血中のプロラクチン増加
      • 思春期以降の女性では、これによる生理不順が問題になったり、男性でも、これにより、乳房が大きくなったりすることがあります。
      • ごく稀ですが、服用初期に高熱を発し、痙攣や意識障害を起こし、危険な状態になることもあります(悪性症候群)。
    2. 抗不安薬(いらいら、不安、緊張があるときにそれを軽減し、QOLの向上を目指します。)
      • 眠気や反応性の低下
      • 継続服薬による効果の減弱(これにより服薬量が増加することもあります。)
      • 薬を飲むことへの依存
    3. 抗うつ薬(うつ状態のほか、全般性不安障害、強迫性障害に使用することもあります。)
      • 覚醒レベル(眠気あるいは不眠)や気分の変化
      • 気分の高揚(そう転)や攻撃的の出現
      • 薬剤減量時の不安感や情緒不安定
      • 自殺企図(若い人で、それが指摘されており慎重投与と観察が必要。)
    4. 抗てんかん薬
      • 眠気や反応性の低下、ふらつき
      • 情緒や行動の問題(多動、興奮性、攻撃性、抑うつなど)の出現や増強
      • アレルギー反応(とくに注意が必要な薬にカルバマゼピン、ラモトリジンがあります。)
    5. その他

      どのような薬でも、肝機能障害、腎機能障害、白血球や血小板の低下などの血球変化を起こす可能性があるので、薬を継続的に服用する人は、定期的な血液チェックが必要です。薬によっては、不整脈を起こすものもありますので、心電図のチェックが必要な場合があります。吐き気や食慾不振などの消化器症状、抗てんかん薬の三つ目でも触れたアレルギー反応もどんな薬でも起こる可能性があります。

    以上、代表的な副作用を示しましたが、前にも述べましたように、人によって反応は様々です。服薬してから(気がつくのが半年くらい経ってということもあります。)、気になる症状が出たら、すぐ、主治医と相談することが大切です。

我々のクリニックでは、薬を処方するとしても、本人やご家族はもちろんのこと、リハビリテーション科、指導部のスタッフとも連携を取りながら、また、学校や他の福祉機関などとも連携をとりながら、副作用に気をつけて、適切と思われる薬の必要最小限の処方をしていきたいと思っています。多くの医師はそれを心がけていると思います。本人、家族、関係者、そして、医師が「それぞれの力を伸ばし、生き生きとした社会参加」の目的を持って協力すれば、必ず、不適切な薬物治療は防ぐことができると考えます。