ADHDとチック

ADHDにチックが併発することはよく見られ、一年以上多彩なチックが持続するトゥレット障害というチック障害ではADHDを伴う頻度が五〇%以上にも及び、一方で、ADHDの小児ではトゥレット障害の頻度が一四%と報告されています。併発例の一部にはチックのためにADHD症状を呈している可能性もいわれています。

チックは、突発的で不規則な体の一部の速い動きや発声を繰り返す状態です。自分では止められない不随意運動とされてきましたが、ある程度の時間であれば制御できることから半随意と考えられるようになっています。

持続期間やチックの程度により
①一過性チック障害(症状の持続が四週間以上一二カ月未満)
②慢性チック障害(一二ヵ月以上持続し、三ヵ月以上持続してチックが消失することがない)
③トゥレット障害(②と同様の持続期間でかつ多彩な運動チックと一つまたはそれ以上の音声チックがある)
に分類されます。チックは運動チックと音声チック、かつそれぞれ単純性と複雑性に分けられます。

単純性運動チックは、瞬き、首振り、顔しかめなど。複雑性運動性チックは物を蹴る、飛び跳ねるなど。単純性音声チックは発声、咳払い、鼻鳴らしなど。複雑性音声チックは反響言語(人の言ったことを繰り返す)、汚言症(人前で言うことがはばかられることを言う)などです。

瞬きだけのチックが一?二ヵ月で消失する一過性チック障害から全身多彩なチックが長期持続するトゥレット障害まで症状の軽重はありますが、病因は基本的には同一であると推定され、運動の調節にかかわる脳の部分の働きが発達の過程でアンバランスを来している状態と説明されます。親の育て方や本人の気持ちに問題があって起こるのではなく、心理的な要因が認められるものはまれです。

ただし本人の心理状態により症状が変動することはあります。チックは園や学校よりも家で目立つ傾向があり、緊張が高まる時と同時に緊張が解けた時にも起こりやすいものです。待合室ではチックが頻発していたのに診察室では目立たないということもよくあります。

チックの経過は様々ですが、三?六歳で発症し、一?二種のチックのままで一年以内に自然に消失する一過性チック障害が九五%以上を占めると推定されています。トゥレット障害の経過をとるものは四?一一歳頃(平均七歳)に顔面や首のチックで発症し、音声チックが加わり、一〇歳前後で最も症状が強くなり一二?一五歳で軽減していきます。九〇%が成人期の始まりまでに軽快し時に消失することもありますが生活に支障を来さない程度の症状を持ち続けることが多いようです。

チックはやろうとしてやっているものではなく、自分で完全には止めることはできないので、やめるように叱らないよう家族で確認してください。先生にも理解してもらい、他のお子さんに指摘されるような時は、自分では止めきれないことを言われるのはいやなことなのだと伝えてください。環境調整しても、もし学習や日常生活に支障を来すような場合は薬物療法の対象になります。ADHD症状についても同様です。

日常生活、社会生活に支障を来さないものについてはあえて治療する必要はありません。環境調整で軽減、消失することも少なくありません。ただし多彩な運動性チック、頻回の音声チックが続き、生活に支障を来す場合は薬物療法の対象になります。薬物としてはハロペリドール、ピモジド、リスペリドン、クロニジン、L?ドーパ等を使用します。

トゥレット障害とADHDの併発ではチック以上にADHDの症状が問題となることも多く、それに対して中枢刺激剤のメチルフェニデートの効果が期待されます。最近は、メチルフェニデートは必ずしもチックの誘発や増悪を来さないという報告があるのですが、今のところ日本では禁忌となっています。チックを併発している場合は昨年発売されたADHD治療薬の選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であるアトモキセチンが選択されます。また、ADHD同様、気持ちのリラックスをはかる効果のある抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蛎湯などの漢方が有効な場合もあります。



公益社団法人 発達協会王子クリニック 洲鎌 倫子