トイレトレーニング(トイレ誘導)と日中のお漏らしについて

1.はじめに

私自身の経験からお話しします。長女が二歳半の時に、次女が難病で生まれたため、二歳すぎから始めていた長女のトイレトレーニングが、うまくいったり、いかなかったりを繰り返し、完璧に卒業するまで、かなり時間がかかりました。今、とても悔やんでいるのは、私が「笑顔でトイレ誘導をしていなかった」ということです。トレーニングを始めたころは、おまるに遊びながら座らせたり、トイレにアンパンマンの絵を張って誘ってみたりと、楽しいトイレトレーニングを実践していました。けれども、毎日毎回のことになると、そうそうご機嫌をとりながらの誘導ができず、うまくいかないと叱っていました。「まだオムツとれないの?」「ちゃんとしつけしてるの?」などという周囲の声に、私自身があせっていたのです。

2.排尿機能について

おしっこは、腎臓で作られて膀胱にたまります。赤ちゃん時代は、膀胱の容量も小さく、おしっこがたまると、すぐに反射で排尿します。一歳半ころから、大脳の発達や膀胱容量の増加にともない、尿意(おしっこが膀胱にある程度たまり、おしっこをしたいと感じること)がわかり、自分の意思でおしっこを少しためることができるようになります。この機能は一人ひとり違うので、オムツが外れる年齢は二歳~四歳と幅があります。

おしゃべりが上手でも、トイレの自立が遅い子や、あまりしゃべらないけれど「おしっこ」は早くから教える子など、言語発達もまた個人差があります。

3.紙オムツについて

紙オムツをすると、濡れた感覚がわからずにオムツが外れる時期が遅くなるという考えもありますが、私は、むしろ紙オムツにすると、濡れていてもしばらくは大丈夫だからと大人側の理由で、トイレ誘導が遅れるのではないかと思います。また、いつまでも紙オムツに頼ってしまうのでは? という不安も聞かれますが、パンツにしていて、おもらしで慌てるよりは、紙オムツをしてタイミングをみてトイレ誘導したほうがお互いに安心です。本人がオムツを嫌がるときは、トレーニングパンツや尿パットを検討してください。

私の子どもがオムツ卒業頃に、電車で外出する機会がありました。まだ親の私が不安なので、紙オムツを着けてもらいました。駅で降りたときに「トイレに行く」と本人が言いました。ところが駅のトイレがとても混んでいました。乗り換えの時間も迫っており、「時間がないから、オムツにして!」と頼みましたが「嫌だー!」と泣かれ、仕方なくトイレの順番を待ちました。このとき「この子はオムツを卒業したんだ」と喜ぶべきだったのに、私は自分の都合で、イライラして子どもを怒りました。本当に申し訳なかったと思います。オムツを卒業したら、オムツにはできないのです。

4.トイレ誘導の仕方

トイレに誘導するのは、朝起きたときや寝る前、入浴前、外出前、食事の前または後などで、二時間は空けてください。あまり頻繁だと、おしっこをためる練習ができませんし、本人なりの尿意の感覚がつかめません。(おなかが空いていないのに時間がきたからと食事をしていると、空腹感がわからなくなるのと同じように考えてみてください。)

尿意を感じる・おしっこをためる→タイミングよくトイレに行く→リラックスして排尿する……のサイクルができるまでには、間に合わずに漏らしてしまったときの失敗感や、大人に怒られる恐怖感、友達に笑われる恥ずかしさ等をなるべくなくすことが最も大事です。

保育園に行っているとオムツがスムーズに外れる子が多いですが、保育士さんの上手な誘導と、みんなと一緒にトイレに行ってみようというリラックス感のたまものだと思います。

トイレという狭い場所が苦手な場合は、ドアを開けておいたり、大好きなおもちゃやキャラクターグッズを置いておいたり、好きな音楽を聞かせたり、そして何より笑顔で対応を心がけてください。

5.お漏らしについて

排尿機能がさらに発達すると、予定の行動の前に「トイレへ行って、とりあえず、おしっこする」ことが可能になります。けれども、これはかなり経験を積まないとマスターできません。したがって、尿意を感じているけれど何かに夢中になっていたり、トイレに行ける状況でなかったりした場合は、オムツが外れても、お漏らしとなってしまうのは仕方ありません。本人は気にしてない素振りでも相当気にしているので、「大丈夫だよ」とやさしく声かけをしてください。そして『お漏らしは、忘れたころにやってくる』と考えて、いつでも、着替えやタオルを持って出かけてください。

なお、常にパンツが濡れている場合は、検査や治療が必要なことがありますので、お近くの小児科や泌尿器科を受診なさってください。

6.最後に

この原稿を機に、成人した娘に、トイレのことで私に怒られた記憶があるか、思い切って聞いてみました。答えは「全くないし、『トイレ』がトラウマになってないんだから、今さら気にすることないんじゃないの」でした。「じゃあ、私に怒られて一番怖かったのはどんなとき?」とさらに聞くと「一人で、ぬいぐるみとおままごとしているときに『このくまちゃん、死んじゃったの』と言ったら、『簡単に、死ぬってことを言ってはダメ!』と大きい声で叱られた……千晴ちゃん(難病で亡くなった妹)が、天国へ逝ってまもなくのころ」とのことでした。私には、この記憶が全くありません。二〇年以上一緒に住んでいる母娘でも、苦い記憶はそれぞれです。すでに子どもに色々言ってしまったと心配せずに、「これから」ゆったりと楽しくトイレトレーニングをなさってください。



公益社団法人 発達協会王子クリニック 竹内紀子(非常勤)